人間は視覚的な美しさと醜さで生き物の価値をはかり、無意識に差別する。同じ昆虫であるはずなのに、蝶や蜻蛉は美しいと感じ重宝するのに対し、蟻や蝿には醜さを感じ、時にはその不快感からいとも簡単に生命を奪おうとする。今回のコレクションは手塚治虫の"人間も他の生物も生命の存在ということについては全く平等である”という考えに着眼点を置いたコレクション。彼の作品の一つである、「人間昆虫記｣からインスピレーションを受け、危険な美しさをもつ主人公･十枝子をデザインミューズに設定した。彼女が感じる寂しさや空虚な精神構造と、彼女が持つ圧倒的な美貌の対比を、軽視される“醜い”昆虫と、重宝される“美しい”昆虫に結びつけ、構築的なディテールとそれを包み込むようなしなやかで丸みのあるシルエットとして表現。ただ美しく見えるのか、あるいは、内蔵を蝕まれたり、心を抉られるような感覚なのか、あなたが感じたものを、見て見ぬふりをせず、そのまま受け入れて頂きたい。